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アウトソーシングで会社が得る
「間接コスト削減」効果

企業経営において、「人件費の削減」や「業務の効率化」は常に重要な課題です。特に中小企業では、限られた人員で多様な業務をこなさなければならず、管理部門に過大な負担が集中しているケースが少なくありません。そこで注目されているのが「アウトソーシング(業務委託)」による間接コストの削減効果です。

アウトソーシングというと、単に「外注して安く済ませる手段」と捉えられがちですが、実際には「人件費以外の隠れたコスト」を抑制し、組織全体のパフォーマンスを高める戦略的手法でもあります。


1. 間接コストとは何か

まず「間接コスト」とは、直接的に売上を生まないが、企業運営に不可欠な費用を指します。例えば、総務・人事・経理といった管理部門の人件費、教育・採用・備品・システム維持費、さらにはトラブル対応にかかる時間的コストなどが含まれます。

こうしたコストは目に見えにくいため、経営者の中には「必要経費だから仕方ない」と考える方も少なくありません。しかし、社労士として多くの顧問先を見ていると、この間接コストの“膨張”が企業の利益を圧迫しているケースを頻繁に見かけます。


2. アウトソーシングがもたらす具体的な削減効果

アウトソーシングによる効果は単なる「人件費削減」ではありません。むしろ、次のような間接的なコスト削減こそが本質です。

教育・採用コストの削減
新たに人事や総務の担当者を採用すると、求人費・教育費・社会保険料などの固定費が発生します。アウトソーシングを利用すれば、専門家が即戦力として業務を担うため、これらの費用や時間的ロスを大幅に削減できます。

法改正対応のリスク回避
労働法や社会保険制度は頻繁に改正され、都度対応を誤ると罰則や是正勧告のリスクがあります。顧問社労士などにアウトソーシングすることで、法令遵守コストやリスク対応のための内部時間を削減できます。

システム・ツール導入コストの削減
勤怠管理や給与計算のシステムを自社で維持する場合、ライセンス料や保守費が継続的に発生します。アウトソーシングでは、委託先が自社システムを利用するため、企業側は個別契約の必要がなくなり、システム関連費用も圧縮できます。

人為的ミスによる損失防止
経験の浅い担当者が給与や社会保険の処理を行うと、ミスが生じやすく、是正対応や信頼低下といった“二次コスト”が発生します。専門家に任せることで、こうした間接的な損失リスクを未然に防ぐことができます。


3. 社労士として見た実例

ある顧問先の製造業A社(従業員40名)では、長年にわたり経理担当者が人事・労務業務も兼任していました。しかし、法改正や社会保険手続きが煩雑になる中で処理が追いつかず、最終的には労基署から是正勧告を受ける事態に。そこで、給与計算と社会保険手続きを当法人にアウトソーシングすることになりました。

導入後、月次処理の精度が安定し、社内ではミス対応に費やしていた時間がゼロに。さらに、担当者は経理業務に集中できるようになり、月次決算のスピードが大幅に向上しました。結果として、年間で約200時間分の業務時間が削減され、残業代コストも軽減。経営者からは「数字以上に精神的な安心感が得られた」との声をいただきました。

別の医療機関B院(職員30名)では、事務長が採用・勤怠・保険請求などを一手に抱えており、慢性的な長時間労働が続いていました。労務アウトソーシング導入後は、職員情報管理・有給付与計算・入退社手続きの自動化を実現し、事務長の残業が月40時間から10時間に減少。これにより、業務効率の向上だけでなく、人件費削減と職場満足度の向上にもつながりました。


4. 経営視点での「間接コスト削減」の本質

アウトソーシングは単なる経費節減策ではなく、「限られた経営資源をコア業務に集中させる仕組みづくり」と捉えるべきです。たとえば、経営者自身や幹部社員が日常的に給与計算・労務管理に時間を割いていると、その分だけ経営判断や営業活動に充てる時間が奪われます。これは「見えない機会損失」として最も大きなコストです。

また、業務が属人化している企業ほど、人の退職時に引継ぎトラブルや再教育コストが発生します。アウトソーシングはこの属人化リスクを分散させ、継続的に一定品質で業務を維持できるという点でも有効です。


5. 社労士としての考えと今後の展望

私は顧問先の支援を通じ、「社内でやるべき業務」と「外部に委ねるべき業務」の線引きができている企業ほど、生産性と定着率が高いことを実感しています。特に中小企業では、“何でも自社で抱え込む”傾向が強く、結果的に責任の所在があいまいになり、トラブル時に誰も対処できない状態に陥ることがあります。

そこで私が提案するのは、「経営リスクを最小化しつつ、価値を生む業務に集中する仕組みづくり」です。たとえば、労務・給与・法改正対応といったルーティン業務はアウトソーシングし、人事戦略や組織づくりに関わる部分を社内で担う。この“役割分担の最適化”が、間接コストの削減と組織の成長を両立させる鍵となります。


6. まとめ

アウトソーシングによって削減できるのは「費用」だけではありません。人材育成の時間、トラブル対応のストレス、情報収集に費やす労力——こうした“見えないコスト”が軽減されることで、経営者や従業員が本来の役割に集中できる環境が整います。

間接コストを削減することは、単なる支出削減ではなく、「組織の質を高める経営戦略」です。これからの時代、限られたリソースをどう活かすかが企業成長の分かれ道となります。アウトソーシングは、その選択肢のひとつとして極めて実践的かつ効果的な手段だと言えるでしょう。


 

執筆:特定社会保険労務士 鈴木教大(社会保険労務士法人レクシード)

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